お釜のおこげ
茶懐石の料理は、あくまで濃茶をいただく前にお腹に入れておくという目的で供されます。空腹に濃茶では胃に負担がかかります。料亭「吉兆」の創設者湯木貞一氏は、濃茶が大好きで、いつも朝食前に服されて胃を痛めたのだと何かで読みました。お茶の水流では濃茶はソースとして扱うので胃への負担は考慮しなくてもよいのですが、気軽な食事という意味での懐石料理は参考になります。
私が「いいね!」と思うのは一汁二菜の献立です。なかでも、ふっくらと炊き上げたご飯とお味噌汁は、シンプルなだけにお客様も構えずに召し上がれるのがよいと思います。最後にご飯を香ばしく焦がしたのを湯漬けでいただくのが、最高のおもてなしと思うのですが、いかがでしょうか。
お茶事のお稽古では、水屋での調理をじっくりと拝見する余裕がなかったので、ご飯のおこげをどうして作っているのかがわかりませんでした。いまや電気炊飯器はスイッチひとつで炊き上げますし、ご飯を焦がすなどという失敗(?)はしません。パエリアやチキンライスなど鍋で調理するご飯ものだとおこげを楽しめるのですが。
と思っていたら、ガスコンロで簡単におこげご飯を作れるスグレモノを発見しました。かまどごはん釜という特殊な陶器のお釜です。ガス火にかけて、勢いよく蒸気が吹きだしたら2分で火を止め、そのまま20分蒸らしておくだけで美味しいふっくらご飯が出来上がります。ご飯の硬さは水の量と火の強さで調節します。強火で炊くときれいにおこげができます。
もともと、わが家の電気炊飯器が何年も使われないまま、マイコンの操作方法がわからなくなり、取扱説明書も失われて、ご飯を炊くのに往生したことから、ガスコンロで使うという点に惹かれて購入に踏み切りました。最初に説明をよく読まずに長時間強火で炊いて、黒焦げご飯を作ってしまい、「購入は失敗だったかも」と悔やみましたが、慣れれば火加減がわかってきます。今では炊きたてご飯の美味しさにすっかり満足。
これはお茶事の水屋では重宝されるかも、と思ったので紹介させていただきました。なによりも節電になるのがいいですね。もっとも保温機能はないので、炊き上がったらすぐに食べないと冷めてしまい、結局はチンしないといけません。家族一同そろった時分に炊き上げる、なんて孤食の時代には本物の贅沢といえるのかもしれません。
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