出光美術館にいく
東京に来るのはいつも仕事がらみです。大学時代の友人と旧交を温め、美術館を訪れ、歌舞伎座で歌舞伎を観たりするのはあくまで二次的な目的ですが、こういう楽しみがなければ一日中セミナー会場に缶詰めにされたいと思いません。しかも、どの会場も狭すぎて定刻に行ったら席がない。みんな慣れっこで部屋の壁際の床に座り込みます。
昼食時に会場を抜け出し、一番近い美術館へ出かけました。昨夜のうちに都内の茶道関係の美術館はチェック済みです。出光美術館は丸の内のお堀端にある帝劇ビル9階にあります。今年の夏にリニューアルオープンしたそうで、創設者出光佐三氏がほれ込んで蒐集した仙厓のコレクション「仙厓・センガイ・SENGAI 禅画にあそぶ」展を開催中です。
仙厓は江戸時代の臨済宗の僧侶でした。40歳で日本最古の禅寺である博多の興福寺の住持となります。若いころから画才で知られ、得意の禅画を通して庶民にわかりやすく禅の教えを説いて、ユーモアあふれる作品を残し、「博多の仙厓さん」として今も親しまれています。名前は知らなくても、□△○の掛け軸をどこかで目にしたことがあるかもしれません。私は橋本治の「ひらがな日本美術史」でこの絵を見て、あまりの「つきぬけ感」に呆然としてしまいました。いよいよ本物とご対面です。
一行書「一日不作一日不食」(現代だとダイエットの檄文になりそう)や「無事」の墨蹟はさすが禅僧の筆、とても見事です。ちょっと気取っている感すらあります。これが自由闊達に描いた絵に賛をつけると、実におおらか、飄々とした趣になります。「厓画無法」と自称したとおり、型破りの発想とくずし方で、観るものの気を晴れ晴れとさせてくれます。今で言うなら「へたウマ」絵、どこか西原理恵子の漫画に通じるなあと思います。利休画賛の利休の顔は、お絵かきでかいたドラえもんといったところ。猪画賛には『其れ出たね』(イノシシの脚が三日月なんだけど)、博多の海岸に打ち上げられたトド(!)を描いたのはいいけれど、「ナンシー関の記憶スケッチ」かとつっこみたくなるくらい楽しい。出光氏が最後に入手した「双鶴画賛」には『鶴ハ千年、亀ハ万年、我れハ天年』(天然か、、)。
茶禅にかかわる極致は、円に『これくふて茶のめ』と書いた「一円相画賛」。子どもが見たら円の中に円を書いてドーナツに描きかえそう。そして例の○△□、解説ではこれを Universe としています。「全」とか「空」の観念を表しているのでしょうか。
仙厓は62歳で隠居し、町中の大道芸や見世物を楽しんだり、福岡県内の史跡や名跡を訪れたりと、今ならシニア誌が取材に来そうなくらい隠居暮らしを楽しんだようです。彼の蒐集した茶道具や骨董、珍しい石なども展示されており、人物をとても身近に感じさせてくれました。
茶室には所蔵のお道具の取り合わせ、また別室には陶片室があり、発掘されたさまざまな窯跡の陶片のコレクションを系統的に展示しています。皇居を正面に見晴らすゆったりとした休憩スペースがあり、無料のティーサービスもあるなど、中高年にはありがたい美術館です。なにかモヤモヤを抱えておられる方、ぜひこの仙厓展をご覧になってください。センガイに突き抜けますよ(どのセンなのやら)。
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コメント
あくあさん、お疲れさまです。今日の日中は暑かったでしょう? 今宵は居待月がきれいです。
ふふ、あくあさんの文章にも十分つきぬけ感があります。存分に楽しまれて、ストレス解消にもなったことと思います。十数年前に「一円相画賛」のレプリカを出光美術館で購入して、当時は毎日眺めていました。引越したときに押入れの奥に引っこめてしまったはずなので、久しぶりに出してみます ^^
明日の土曜日はお仕事抜きですごせるのかしら。明日もまた良い一日になりますように‥ 帰洛されるときにはどうぞお気をつけて。
投稿: 雪月花 | 2007/09/28 19:51
雪月花さん、こんばんは。
本当に暑かったですねえ。私はさすがに疲れて半日ホテルの部屋でごろごろし、昼から雪月花さんがブログで紹介されていた「平良敏子展」を見に行きました。京都でも開催されていたのですね。まったく知りませんでした。
これほど見事な手わざの反物を一度に目にする機会に恵まれ、とても感謝しております。
明日は今日サボった分、しっかり研修して帰ります(冷や汗)。
投稿: あくあ | 2007/09/28 21:46
あくあさん、お久しぶりです。
仙厓の絵には飄々としたもの、
南画風のもの、明代の絵のような
繊細なもの、いろいろありましたね。
遺愛の品も興味を引かれました。
ごつごつの硯とか、面白いものを
使っていらしたのですね。
TBさせていただきました。
投稿: 郁 | 2007/10/03 22:31
郁さん、こんばんは。
TBありがとうございました。
私は仙厓さんの禅画に大笑いさせてもらったので、そのユーモラスな一面しか紹介できていないなあと、郁さんの記事を拝見して反省しておりました。
言い足りなかったところを補足していただくことになり、ありがたく存じます。
私自身も石を集めるのが好きなので、遺愛の品々を観て他人とは思えませんでした。私って仙厓さんの生まれ変わりじゃなかろうか?なんて思ってしまいました(笑)。あの画才が私にもあればいいのに、、。
投稿: あくあ | 2007/10/03 22:54